厚底でも消えない違和感。タイムは出ても「足が重い」のはなぜ?
1月12日。新しいランニングシューズ プーマヴェロシティニトロ4を履き、5kmのタイムトライアルを走りました。

結果はキロ4分13秒。
ハーフマラソンで90分切りを目指す身としては、タイムだけ見れば悪くありません。
ところが、走り終わった瞬間、どうにもぬぐえない違和感が残りました。
スピードは出ているのに、どこか非効率な走り。
その理由を教えてくれたのが、カシオのランメトリックス(Runmetrix)でした。
骨盤回転タイミングは「33」。
数値が示していたのは、“骨盤が使えていない走り”でした。
その非効率を変えるために選んだのが、プーマ プロピオニトロという薄底シューズです。
別の記事で、このシューズのレビューを詳しく解説しています。
本記事では、その気づきから始まった「120時間のフォーム改革」を記録しています。
薄底シューズとランメトリックスを組み合わせることで、何が見えたのか。
そして、どのように改革したのか。
データと感覚、両方を手がかりに、その過程をたどっていきます。
ランメトリックスの宣告:「骨盤がサボっています」

ヴェロシティ ニトロ 4は新品。
新しいシューズなら、今の自分以上のパフォーマンスを引き出してくれるはず。
そんな予感を抱いて、タイムトライアルを走りました。
ところが、走り始めてすぐに違和感を覚えます。
「あれ?何か違う」
ペースは出ている。
それなのに、走りの感覚が理屈では修正できない状態に陥っていました。
立て直そうとしても、できることは根性と力ずくで押し切ることだけ。
ひざ下に重りをつけて、泥沼の中を無理やり進んでいるような感覚です。
カラダは前に進んでいるのに、どこかで大量のエネルギーをロスしている。
そんな感覚が、ずっと消えませんでした。
スピードは出ています。
でもそれは、カラダ能力が向上した結果ではない。
ただ「根性」という名の高価な燃料をドバドバと注ぎ込み、
エンジンを焼きつかせながら走っているだけ。
走り終えた瞬間、はっきりと確信しました。
これは、持続できない走りだ。
走行後、データを確認しました。
カシオのランメトリックスが示した数値は、
その違和感を驚くほど正確に示してしていました。
ランメトリックスとは:カシオが提供するランニング動作解析ツール。骨盤の回転タイミング、着地時の左右衝撃、接地時間など、ビデオ分析では見えない微細なフォームデータを数値化します。このデータこそが、「根性走」と「効率的な走法」の違いを明確に浮き彫りにしてくれるのです。
1月12日 ヴェロシティ ニトロ 4での5kmTT(キロ4:13)のデータ

- 骨盤回転タイミング:33
- 右脚左右方向衝撃:60.2
- 接地時間:225ms
- 50以上:理想的
- 40〜50:良好
- 30〜40:要改善
- 30以下:機能不全
私の33は、「改善の必要がある」状態を意味していました。
あえて「プーマ プロピオニトロ」を履いた理由

骨盤の回転は、単なるフォームの話ではありません。
重心移動と推進力の効率を左右する、走りのベースになる部分です。
骨盤がうまく回っていない走りでは、脚だけが前に出ようとします。
地面からの反発エネルギーを体幹全体で受け止められず、
負荷が脚の筋肉に集中してしまう。
さらに、左右方向衝撃が高い(60.2)という数値は、
着地のたびに体重が脚の外側へ流れていることを示していました。
つまり私は、着地位置、タイミング、反発を受け取る瞬間が
噛み合わないまま走っていたのです。
本来なら、これらが一致した一瞬に、エネルギーロスなく前へ進めるはず。
私のこの走り方では、距離が伸びるほどエネルギー効率は落ちていきます。
ハーフマラソンで90分切りを狙うなら、
21kmの大半を「理屈では修正できない根性走り」で押し切ることになる。
それでは、終盤の失速は避けられません。
データが教えてくれたのは、とてもシンプルな事実でした。
「このままでは、目標には辿り着けない」
だから私は、この違和感を見過ごしませんでした。
そのために必要だったのが、薄底シューズだったのです。
1月14日:薄底で気づく「本当の着地」
クッションの甘えを捨てて、地面と対話する


現代のランニングシューズ、特に厚底モデルは、
非常に完成度の高い技術が詰め込まれています。
ただ、その恩恵が、必ずしもプラスに働くとは限りません。
最新の厚底シューズは、多少のフォームの乱れであれば、
クッションがうまく包み込んでしまう。
その結果、気づかないうちにカラダが「不正解」に慣れていく。
それでも走れてしまうから、問題があることにすら気づけない。
今の私に必要だったのは、そうした甘えを許さない、
直感的なフィードバックでした。
選んだのは、プーマ プロピオニトロ。
スタックハイト22mm/17mmの薄底シューズです。
足を入れた瞬間、その違いがはっきりと分かりました。
フィードバックの精度が、まるで違う。
厚底では曖昧になっていた感覚が、
地面との「対話」として、はっきり返ってきます。
(プロピオニトロの特性やスタック感については、別のレビュー記事で詳しく解説しています。本記事では、このシューズを使った「フォーム改革」の実践記録に焦点を当てます。)
シューズ:プロピオニトロ
トレッドミル傾斜:1.5%
平均心拍数:151bpm
ペース:5:16/km → 4:36/km
走り終わった直後の印象は、少し意外なものでした。
「思っていたほど薄底ではない。むしろ、反発がダイレクトに返ってきて、走りやすい」
ただ、距離を重ねるにつれて、新たな課題が浮かび上がってきます。
脚力が足りない。
それは、これまで「厚底と根性」に頼っていた部分を、
このシューズが一切ごまかしてくれない、ということです。
同時に気づいたのは、路面からの反発を、
きちんと推進力に変換するスキルが必要だということ。
つまり、正しい設置位置とタイミングで、骨盤がそれを受け止めなければならない。
その瞬間、すべてが一本につながりました。
ヴェロシティ ニトロ 4で感じていた「感覚のズレ」は、スキル不足ではなく、
「設置のタイミングそのものが間違っていた」ことが原因だったのです。
骨盤が動き出し、一歩の伸びが劇的に変わった
骨盤が動き出し、一歩の伸びがはっきりと変わりました。
プロピオニトロでの初走行データを、区間ごとに確認していきます。

| 区間 | ペース | 骨盤回転タイミング | 右脚左右方向衝撃 |
|---|---|---|---|
| 1km | 5:16 | 48.45 | 49.75 |
| 4km | 5:00 | 48.2 | 47.5 |
| 7km | 4:48 | 46.75 | 49.05 |
| 10km | 4:36 | 45.9 ↘ | 49.9 ↘ |
骨盤回転タイミングは、ヴェロシティ ニトロ 4での「30.2」から、
初日で「45.9」まで改善。
右脚の左右方向衝撃も、72.5から49.9へ。
約30%の削減です。
同じペース帯を走っているにもかかわらず、
シューズを替えただけで、ここまで数値が変わるとは。
| 指標 | 1/12 ヴェロシティ ニトロ 4 | 1/14 プロピオニトロ | 変化 |
|---|---|---|---|
| 骨盤回転タイミング | 33.2 | 45.9 ↗ | +12.7 |
| 平均ピッチ | 182.4 spm | 177.3 spm ↘ | -5.1(効率UP) |
| 接地時間 | 233 ms | 235 ms | ほぼ同等 |
| 右脚左右衝撃 | 65.0 | 59.4 ↘ | -5.6 |
一見すると、少し矛盾しているようにも見えます。
一昨日は、ピッチを185以上まで上げ、力ずくで走っていました。
それに対して今日は、低めのピッチを保ったまま、
ストライドを伸ばすことでビルドアップできています。
ピッチは下がった。それでもペースは上がり、骨盤回転は改善し、衝撃は減った。
これは、明らかに「効率化」を示すシグナルです。
小刻みに脚を動かす走りから、
地面を捉えて、大きく前へ進む走りへ。
その転換が、すべての数値に反映されていました。
薄底で地面を捉える感覚は、走りに関する情報の解像度を一気に引き上げます。
地面からの反発を、どう受け止め、どう骨盤へ伝えるのか。
「骨盤を回す」のではない。
それは、「お腹の底から、脚をスッと前へ引き抜く」ような感覚です。
この感覚が安定してくると、
設置位置、タイミング、反発の受け取りが、
ときどきピタッと噛み合う瞬間が現れます。
その一瞬こそ、推進力のロスが最小になる瞬間。
この感覚を保てるようになれば、
長く走っても疲労やエネルギーロスは確実に減っていくはず。
余計な変数を削ぎ落としたことで、
ようやく「骨盤」という主役が、数値の中に姿を現しました。
1月15日:厚底に戻しても「ラク」が続く
心拍数が低下。同じペースでも息が切れない
翌日。前日の疲労が残る中、
ディヴィエイト ニトロ 3で再び10kmのビルドアップ走を行いました。

シューズ:ディヴィエイト ニトロ 3
平均心拍数:146bpm
ペース:5:16/km → 4:30/km
平均ピッチ:174spm
股関節まわりに、これまで経験したことのない強い疲労感が溜まっていました。
長年使われず、サビびついた巨大な金属ギアを、
オイルも差さずに無理やり回し始めたときに生まれる「摩擦熱」。
例えるならそんな感じです。
前日に薄底で骨盤主導の動きを意識したことで、
眠っていた股関節深部の筋群が、動き始めたのだと思います。
厚底を履いても、「骨盤」が沈み込まない。
疲労を抱えた状態にもかかわらず、データには、興味深い変化が現れていました。
| 指標 | 1/14 プロピオニトロ | 1/15 ディヴィエイト ニトロ 3 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 平均心拍数 | 151 bpm | 146 bpm ↘ | –5bpm |
| 骨盤回転タイミング(最終km) | 45.9 | 46.0 | 40台を維持 |
| 平均ペース | 約5:00 | 約4:36 ↘ | ペースUP |

昨日よりペースアップ。
それでも、前日の疲労が残った状態で、
心拍数は5bpmも下がっていました。
一見すると、わずかな差に見えるかもしれません。
しかし運動生理学的に見ると、
これは酸素を使う効率が向上しているサインです。
体感的には、およそ3〜5%程度の効率改善と考えられます。
これをハーフマラソンに当てはめると、
同じペースで走った場合でも、心拍数が低いということは、その分だけ疲労が抑えられている、ということになります。
終盤の20分間で心拍が安定していれば、
ペースを維持するための「意識的な頑張り」は確実に減る。
結果として、後半の戦い方に余裕が生まれます。
実レースで考えるなら、この5bpmの差は、
最後の1〜2kmで「あと少し」を保てるか、
それとも失速するかの分かれ目になります。
ディヴィエイト ニトロ 3のカーボンプレートとニトロフォームが、
心肺への負担をうまく肩代わりしてくれた証拠です。
そして、ここで重要な気づきがありました。
プロピオニトロでつかんだ「骨盤主導」の感覚が、
ディヴィエイト ニトロ 3でも、そのまま機能していたのです。
数値は昨日よりわずかに下がりましたが、それでも40台を維持。
ヴェロシティ ニトロ 4のように、30台へ落ち込むことはありませんでした。
つまり、新しい「動作OS」は、
シューズを替えても崩れず、カラダに定着し始めているのです。
| シューズ | 骨盤タイミング(4:30付近) | 体感 |
|---|---|---|
| ヴェロシティ ニトロ 4 (1/12) | 30.2 | 沼にハマる |
| プロピオ (1/14) | 45.9 | 反発をつかむ |
| ディヴィエイト ニトロ 3 (1/15) | 43.1 | ガタガタだが速い |
この「ガタガタ」という感覚は、シューズの反発を引き出すために、
昨日鍛えた股関節をフルに使った結果として現れた、ポジティブな反応でした。
不快な疲れではありません。
「正しい筋肉が、正しく働いた」ことを知らせる疲労です。
股関節の奥に残る、深い充実感。
それこそが、昨日の練習で目覚めた部位から返ってきた、確かなサインでした。
1月16日:キロ4分が「ラク」になる逆転現象
「蹴る」のをやめたら、後半ほど加速できた
1月16日。1km×5本のインターバルに取り組みました。
- シューズ:プロピオニトロ
- ペース:4:00/km
- セット本数:5本
本数を重ねるにつれ、心肺も脚も、確実に限界へ近づいていきます。
呼吸は荒れ、心拍数もピークに向かっていく。
普通なら、ここでこう考えます。「あと一歩、根性で地面を蹴れ」
しかし、この3日間で、明らかに何かが変わっていました。
呼吸の乱れが最大に達する中で、
私は意識的に、ひとつの選択をしました。
「足で動こうとせず、骨盤の回転(傾き)に集中する」
2本目と5本目の間で起きた変化は、偶然ではありません。
| 本数 | 骨盤回転タイミング | 右脚左右衝撃 |
|---|---|---|
| 2本目 | 43.5 | 51.85 |
| 5本目 | 48.05 ↗ | 48.65 ↘ |
走りながら、
「脚の運びを骨盤主導に切り替える」という、明確な意識転換を行っていたのです。
疲労で判断力が落ちている状態で、
この切り替えを実行するのは、簡単ではありません。
それでも可能だったのは、
前日の疲労によって股関節が目覚めていたからこそでした。
4分15秒より、4分ジャストの方が「ラク」に感じる理由
| 指標 | 1/12 ヴェロシティ ニトロ 4(4:15) | 1/16 プロピオ(4:00) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 骨盤回転タイミング | 30.2 | 48.05 | +17.85 |
| 平均ストライド | 約1.23m | 1.37〜1.39m | +14〜16cm |
| 平均心拍数 | 不明 | 161 bpm | – |
| 体感 | 沼にハマる | 骨盤に乗る | 質的転換 |
一昨日、「沼」にハマっていた4:15/kmよりも、
今日の4:00/kmのほうが、動作の質ははるかに洗練されていました。
同じようなペース帯でも、効率はまったく違う。
4:15は、根性で走るペース。
4:00は、骨盤で走るペース。
むしろ、速いほうが「ラク」になる。そんな逆転現象が起きていました。
では、これは何を意味するのか。
閾値を超える負荷こそが、
カラダに「正しい動作」を強制する、ということです。
ラクなペースでは、脳は複数の選択肢を残してしまう。
けれど、限界に近い負荷の中では、
選択肢は削ぎ落とされ、「唯一の正解」だけが残ります。
そして、その正解が――
「骨盤主導」だったのです。
がむしゃらな「走り」からの卒業
ランメトリックスの数値と「勝負の一足」の選び方
「根性走り」からの卒業
脚だけで走る非効率な動きを、データで特定できました。
ヴェロシティ ニトロ 4で記録した「30.2」という数値は、
「根性で補っている走り」を、そのまま可視化したものです。
即効性のあるフォーム改善
薄底を導入した初日から、骨盤回転は大きく改善。
同時に、低いピッチのままストライドが伸びるという、
効率化の明確なサインを確認できました。
動作OSの定着
厚底シューズに戻しても、骨盤主導のメリットは失われませんでした。
心拍数が5bpm下がったという事実は、
新しい動作パターンがカラダに根づき始めたことを示しています。
高負荷への耐性
疲労した状態でもフォームが崩れない意識が定着。
むしろ、最大負荷の中でこそ、
もっとも良いフォームが引き出される。
そんな新しいフェーズに入りました。
| 日付 | シューズ | ペース | 骨盤回転タイミング | 右脚左右衝撃 | 心拍数 | 体感 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1/12 | ヴェロシティ ニトロ 4 | 4:15 | 30.2 | 72.5 | – | 沼にハマる |
| 1/14 | プロピオ ニトロ | 4:36→5:16 | 45.9 | 49.9 | 151 | 反発をつかむ |
| 1/15 | ディヴィエイト ニトロ 3 | 4:30→5:16 | 43.15 | – | 146 | ガタガタだが速い |
| 1/16 | プロピオ ニトロ | 4:00 | 48.05 | 48.65 | 161 | 骨盤に乗る |
ボストン12かディヴィエイト ニトロ 3か。次のレースシューズをどう選ぶか
「骨盤主導」の感覚をつかんだ今、
新たな問いが生まれました。
どのシューズなら、
このフォームを、より長く維持できるのか。
そしてもうひとつ。
実戦の長距離で、
心理的な安定と生理的な効率を、同時に支えてくれるのはどれか。
ハーフマラソン想定と現実的な目標ペース
目標は、1時間29分台。
そのためには、練習の段階で、
目標ペース付近の走りを確実に積み重ねておく必要があります。
プロピオニトロでは、すでにその感触を得ました。
ただし、レース本番は別物です。
アドレナリンがあふれ、
最初の数kmは、どうしてもオーバーペースになりやすい。
多くのランナーが、ここで失速を経験します。
そこで採用するのが、ネガティブスプリットという戦略です。
序盤:心拍を抑えながら、骨盤主導の感覚を確認する区間
中盤:ペースを少しずつ引き上げ、骨盤回転の安定性を確かめる
終盤:残っている力を出し切る。ただし、骨盤主導のフォームだけは崩さない
この戦略では、終盤に心拍数が上がるのは避けられません。
そのときに、
「骨盤回転を最後まで維持させてくれるシューズ」かどうか。
そこが、完走と失速を分ける、生存戦略の分岐点になるのです。
4足の使い分け:プロピオニトロは「走りの先生」
この3日間の試行を通して、
それぞれのシューズが担う役割が、はっきりと見えてきました。
1足ですべてを解決しようとするのは、
実は、かなり無理があります。
大切なのは、
各シューズの「得意な領域」を理解し、
練習のフェーズごとに使い分けること。
そうして初めて、
「骨盤主導」という動きが、カラダに完全に定着していくのだと感じています。
プーマ プロピオニトロ: フォームのズレを即座に教えてくれる「先生」役

このシューズの最大の価値は、
走りの中で生まれる「甘え」を一切見逃さない点にあります。
スタックハイト22mmという薄さは、
単なるスペックではなく、明確な意図をもった選択。
厚底シューズが無意識にフォームの乱れを吸収してしまうのに対し、
プロピオニトロは、骨盤を使わなければ前に進めない状況を自然に作り出します。
実際、ヴェロシティ ニトロ 4で30.2だった数値が、
初日から45.9へと一気に改善した背景には、
このシューズがもたらす「分かりやすいフィードバック」がありました。
地面との距離が近いため、接地のわずかなズレが、
そのまま身体感覚として返ってきます。
プロピオニトロについては、
別途詳しいレビュー記事も用意していますので、
シューズ選びの判断材料として参考にしてみてください。
週2回ほど、
感覚をリセットするための「研ぎ澄ます道具」として使うことで、
走り込みを重ねてもフォームが崩れにくくなります。
・ダイレクトな接地感により、骨盤主導の感覚が最もつかみやすい
・初日から変化を実感しやすく、モチベーションが一気に上がる
・疲れてもごまかせないため、正しい動きが自然と身につく
・長時間走では脚への負担が大きい
・距離向きのシューズではなく、長距離適性は限定的
・使いすぎると疲労が溜まりやすいため、週2回程度が目安
アシックス エボライドスピード3: 自然といいリズムを作ってくれる、頼れる練習パートナー

プロピオニトロでつかんだ
「お腹の底から、足をスッと前に引き抜く感覚」。
それを、意識しなくても再現できる状態に近づけてくれるのが、
エボライドスピード3です。
このシューズ特有のロッカー構造による転がり感は、
骨盤の回転運動に自然と“乗れる”設計になっています。
骨盤を意識して操作する段階(プロピオニトロ)から、
骨盤主導が無意識の動きとして定着していく段階へ。
その橋渡し役として、このシューズは欠かせません。
実は、購入のきっかけ自体はかなり単純でした。
「スピード」という名前と、「ロッカー構造が推進力を助ける」という説明に惹かれただけ。
ところが実際に使ってみると、
想像以上に“練習効率を底上げしてくれる一足”だと気づきました。
疲労を溜めすぎることなく、骨盤主導の距離を自然に伸ばせる。
結果として、このシューズは動作OSを定着させるメインシューズになっています。
- ロッカー構造によって、骨盤回転が自然と「自動化」されやすい
- クッション性とダイレクト感のバランスが良く、疲労を抑えつつ感覚を保てる
- 10km以上の中距離で、骨盤主導の動きを習慣化しやすい
- 自動化が進む分、骨盤回転そのものがシューズ任せになりやすい
- 本番レースではこの“助け”がなくなるため、他シューズへの切り替え時にフォームが乱れる可能性がある
プーマ ディヴィエイト ニトロ 3: 疲れがたまるレース後半、勝手に足を運んでくれる安心感

レース終盤。
骨盤の回転が鈍り始め、脚も限界に近づいたその瞬間に、
このシューズの本領が現れます。
ニトロフォームの高反発とカーボンプレートの推進力が、
意志や根性ではなく、純粋にシューズの性能としてカラダを前へ押し出してくれる。
「走らされている」というより、「運ばれている」に近い感覚です。
実際、1/15のデータでは、同一ペースにもかかわらず心拍数が-5bpm。
これは単なる体調差ではなく、
疲労によって低下した骨盤回転を、シューズ側が物理的に補完し、
心肺への負担を肩代わりしていたことを示しています。
ただし、明確な課題も見えました。
それが、接地時の「沈み込み」です。
厚底特有のクッションは、着地の瞬間にわずかな沈み込み時間を生みます。
そのタイミングが、骨盤の回転スピードより遅いと感じられる場面がありました。
つまり、骨盤はすでに次の回転に入ろうとしているのに、
足部はまだ「沈んでいる途中」というズレが発生するのです。
このズレを、疲労した脳とカラダがレース後半で補正できるか。
そこが、このシューズを本番で使う際の最大の不確実性になります。
- 心拍数-5bpmという明確な生理的効率化により、後半のペース維持が期待できる
- シューズの推進力に任せることで、意識的な力を温存できる
- 最高負荷状態での「セーフティネット」として非常に優秀
- 厚底特有の沈み込みが、骨盤回転スピードに対するロスとして感じられる
- この遅延を疲労下で補正できるかは、本番まで未検証
- 感覚と実際の接地のズレが、最後の1〜2kmで心理的不安につながる可能性
アディダス ボストン 12: 自分の狙い通りに地面を捉えられる、バランスバツグンの相棒

ボストン12は、今回のラインナップの中で
最も「等身大の自分」をそのまま地面に投影できるシューズです。
プロピオニトロほど尖ってはいない。
ディヴィエイト ニトロ 3ほど“運んでくれる”わけでもない。
その代わり、「自分が狙った入力を、ほぼそのまま地面に伝えてくれる」
という点で、非常に完成度が高い。
プロピオニトロでつかんだ
設置位置・設置タイミング・反発のタイミング
この3点セットの感覚が、ボストン12では崩れにくい。
むしろ、適度なクッションが入ることで
その感覚を“長く保てる”可能性すらあります。
ここで重要なのは、
レース後半に必要なのは「最速の推進力」ではなく、
「自分の動きを疑わずに済む心理的安定性」だという点です。
疲労下では、フォームを細かく修正する余裕はありません。
だからこそ、
- 変な沈み込みがない
- 反発が過剰に主張しない
- 入力と出力の関係が一貫している
この「素直さ」は、終盤での生存率を確実に高めてくれます。
ボストン12は、
骨盤主導を“邪魔しない”という点で、非常に優秀です。
ただし、冷静に言えば——
この評価はまだ「仮」です。
ハーフ〜それ以上の距離で、
・心拍がどう推移するのか
・終盤で骨盤回転が本当に維持できるのか
これは、実走で確認する必要があります。
- プロピオニトロに近いダイレクト感で、骨盤主導の走りが活かしやすい
- クッションと反発のバランスが良く、長距離への適応余地がある
- 「自分の走りを信じられる」心理的安定感が大きい
- 長距離レースでの実績が自分の中ではまだ不足
- 心拍効率(省エネ性能)がディヴィエイトほど高くない可能性
- 他3足との比較テストを経て、立ち位置を確定させる必要あり
シューズ選択の難しさ:「好き」「ラク」「定着」の三角形
ディヴィエイト ニトロ 3は、本当に完成度の高いシューズです。
生理的効率――特に心拍数低下という一点においては、現時点で最も優れた結果を出しています。
データだけを見れば、
「これを選ばない理由がない」
そう結論づけても不思議ではありません。
しかし今の私には、接地の瞬間に生じる厚底特有の“沈み込み”が、骨盤の回転スピードに対するわずかなロスとして知覚されてしまいます。
最大負荷状態でも骨盤主導を維持する、という今回のテーマにおいて、この違和感は無視できない要素です。終盤で顕在化すれば、致命傷になり得ます。
一方、ボストン12はプロピオニトロの延長線上にあるダイレクトな接地感を持ちながら、長距離を想定した適切なクッション性を備えています。
感覚と実際の接地挙動のズレが最小限に抑えられ、「狙った通りに着地できている」という信頼感が最も高い。
エボライドスピード3は、また別の立ち位置です。
骨盤主導の動きを“考えずに再現できる”方向へ導いてくれる存在。
フォームが定着し始めた段階では、このロッカー構造が練習全体の疲労管理に大きく貢献します。
整理すると、心の中には三つの声があります。
この三角形をどう分解し、どう再構成するか。
主観的な「好み」と、レース後半の「生存戦略」をどう両立させるか。
その答えは、机上では出ません。
15kmの試走、20kmのLSD、そして実戦。
疲労を背負った状態で何を信じられるか――
その積み重ねの中から、自然と浮かび上がってくるはずです。
自分のカラダを信じてスタートラインへ
3日間にわたる、自己を実験台にした「因数分解」は、ここで一区切りです。
以前なら、この翌朝は大腿四頭筋の強烈な筋肉痛で、階段を降りるのも一苦労だったはず。
けれど今、脚は驚くほど軽い。
残っているのは、股関節の奥にじんわりと広がる、深い充実感だけです。
それは「正しい筋肉が、正しく使われた」という、カラダからの明確なフィードバック。
根性に頼る走りでは、決して得られなかった種類の手応えでした。
薄底ランニングシューズで走りは変わる
これまで頼ってきた
走行距離という「免罪符」や、
根性という「不確実な燃料」は、もう手放します。
これからは、
「自分のカラダを、納得したうえで動かせている」
その確信を携えて進む。
それは、
データで言えば「骨盤回転48」、
心拍数で言えば「目標ペースで161bpm」という客観的な数値。
同時に、
「設置位置・タイミング・反発のタイミングが噛み合う一瞬」
という、はっきりとした主観的な感覚でもあります。
データと感覚がズレない。
この一致点こそが、新しい走り方の核です。


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