
Garmin・COROS・Runmetrixを使いながらも解消できなかった「既存ツールの4つの限界」を実体験とデータで整理します。
なぜAIでトレーニングツールを作る必要があったのか、その背景をまとめました。
データが豊富=最適なメニューではない。「記録の自動化」と「行動の導き」にある決定的な溝
そもそも、ランニングアプリがない時代を思い出してください。
トレーニングメニューを作る方法は2つしかありませんでした。
自分で考えるか、指導者に作ってもらうかです。
「今日は何をすべきか」という問いに答えてくれる存在は、自分自身か、コーチしかいなかった。
アプリが登場して、この状況は大きく変わりました。
メニューを提案してくれる。
記録を可視化してくれる。
ペースや心拍のガイドも出てくる。
かつては指導者に頼むしかなかったことを、スマホ一台でカバーできるようになりました。
でも一つ、アプリには届かない部分があります。
「あなた個人の状況を理解した上で、今日何をすべきかを判断する」という機能です。
これはアプリが登場する前から変わっていない課題です。
昔は指導者がその役割を担っていました。
今もその役割を担えるのは、本来は指導者だけです。
アプリはデータを出せても、「あなたの今日」を判断することはできない。
ランニングを続けていると、データは自然に増えていきます。
GarminやCOROSをつければ、ペース・心拍・距離・VO2Maxがリアルタイムで計測されます。
走り終わればアプリが自動同期し、翌日のトレーニングメニューまで提案してくれます。
Runmetrixを使えばフォームの左右差まで数値で出ます。

「これだけ揃っていれば十分では?」と思っていた時期が、私にもありました。
おそらく同じように感じているランナーは多いと思います。
でも使い続けるうちに、あることに気づきました。
これらのツールが得意なのは「記録すること」であり、「次に何をすべきか導くこと」は別の話だということです。
データを出す機能と、そのデータをもとに行動を示す機能は、まったく異なります。
既存ツールの限界は、この溝のところにありました。
「分析の限界」については別記事にまとめています。
この記事では、もう少し具体的な場面での限界を4つ書きます。
どれも「あるある」と感じてもらえると思います。
「気温30度」を無視するメニュー:ツールが考慮しない過酷な現実と、体からのサイン

「夏でも走り込まないといけない」と思っていた時期があります。
夏のある日、16時ごろから走り始めました。
アプリが提示したメニューをこなすつもりでした。
「暑さに勝つ、耐える」という気持ちもあった。
過酷な環境でトレーニングすることに、どこか意義を感じていたのだと思います。
でも走り始めて数分で、心拍数が160近くまで上がりました。
設定ペースより1分近く遅れています。
それでも続けました。
「メニューをこなさなければ」という気持ちが、体のサインより優先されていました。
30分が経過したとき、足が止まりました。
走れなくなったのではなく、「これ以上は危ない」と体が判断した感覚でした。
歩いて自宅に戻る途中、コンビニに寄りました。
600mlの麦茶を3本、立ったまま飲み干しました。
アプリはその日も翌日も、同じペースのメニューを提示し続けました。
気温のことは、どこにも反映されていませんでした。
この経験がきっかけで、早朝に走るようにシフトしました。
気温が上がる前に終わらせる。自分で気づいて、自分で変えた判断です。
でもそれは、ツールが教えてくれたことではありませんでした。
「夏になったら急にペースが落ちた。自分だけ体力がないのか」と感じたことはありませんか。
たぶんそうではありません。
ツールが気温を無視したメニューを出し続けているだけです。
ランニングデータだけを見ていると、「気温30度の16時」と「気温18度の6時」は同じ条件として扱われます。
心拍の上がりやすさも、脱水リスクも、適切なペースも、すべて変わるはずなのに。
「1週間休んだ翌日に16km走」? 現実のライフサイクルに追いつかない計画と、AIコーチアプリの死角
仕事の都合で走れない日があります。
体調が崩れて1週間空くこともあります。
50代ともなれば、疲れが抜けにくい日もある。
家族の都合で予定が狂うこともある。
「今週は走れなかった」という週が、誰にでもあるはずです。
そういうとき、既存ツールのメニューはどうなるか。
何事もなかったかのように、翌日も同じメニューが並んでいます。
1週間休んだ翌日に「ペース走16km」が提示されたとき、さすがに従いませんでした。
でも「では何をすべきか」は、自分で考えるしかありませんでした。
週間スケジュールにも柔軟性がありません。
月曜に予定していたインターバルを木曜にずらしたとき、残りの週のメニューが自動で組み直されることはありません。
ポイント練習が連続してしまっても、ツールは気づきません。
レース前のテーパリング(練習量を落として疲労を抜く期間)も同じです。
「あと3週間でレース」という情報をツールに反映させても、細かい強度の調整は結局手動でした。
「計画通りに動けない自分が悪い」とずっと思っていました。
でもある時点で気づきました。計画を現実に合わせて組み直す機能が、そもそもツールにないのだと。
完璧にメニューをこなせるランナーなど、ほとんどいないはずです。
この問題を補うアプリを試したことがあります。RestOrTrainというAIコーチアプリです。

GarminやCOROSが提示したメニューに対して、「今週は仕事が忙しいので短めにしたい」「このインターバルをロング走に替えられるか」といった相談ができます。
するとAIがメニューを組み直してくれる。「計画を現実に合わせて変える」という機能を持った数少ないツールです。
実際に使ってみると、メニューのアレンジ相談という点では十分に機能しました。
Garmin・Strava連携にも対応しており、トレーニング履歴をもとにしたアドバイスも受けられます。
ただし一つ、埋められない溝がありました。
Runmetrixとは連携しないのです。
「GCT差が−2.08msで横衝撃差が+20.70だったので、今日のペース走は控えめにしたい」という相談はできません。
細かく数値化された自分のフォームデータをもとにしたアドバイスは、RestOrTrainでは受け取れない。
メニューの組み替えはできても、「なぜそのフォームになっているか」「何を直すべきか」という部分には届かないのです。
既存ツールの限界を補うアプリとして、RestOrTrainは確かに有効です。
でも「自分の走りをフォームデータで改善する」という目的には、まだ届いていません。
「今日のシューズ」も「主観的な疲労」も考慮されない。ツールが描く“平均的なランナー”という幻想

もう少し細かい話をします。
複数のシューズを使い分けているランナーは多いと思います。
私もトレーニング用・レース用・フォーム改善用と場面で変えています。
ところがトレーニングメニューにシューズの情報は入りません。
「今日はプロピオニトロを履いて、骨盤を意識したいのでペースを落とす」という判断は、すべて自分の頭の中だけで処理されます。
「今日は体が重い」という感覚も、メニューに反映されません。
Garminのボディバッテリーや睡眠スコアは参考にできますが、それを見てメニューを自動調整してくれる仕組みはありません。
「スコアが低いな」と確認しながら、同じ負荷で走り始める。
思い当たる節がある人は多いのではないでしょうか。
蓄積疲労も同じです。
1回1回のトレーニングは適切な負荷でも、週単位・月単位で積み上がった疲労の総量をメニューに反映するのは難しい。
「先月は走り込みすぎた」という感覚を、ツールはデータとして持っていても、メニューには戻ってきません。
これらをまとめると、既存ツールは「平均的なランナー」向けには機能します。
でも「自分」向けには設計されていません。
仕事・家族・体調・シューズ・疲労——それぞれ違う状況を抱えているのが、リアルなランナーの姿です。
「ツールに自分を合わせる」のはもうやめよう。私が“自分専用のAIツール”開発をはじめた理由
整理すると、既存ツールの限界は4つです。
| 限界 | 具体的な場面 |
|---|---|
| 分析の限界 | 課題は見えるが、改善方法を教えてくれない |
| 環境への非対応 | 気温・天候・体調がメニューに反映されない |
| 動的な再構成ができない | 休養・スキップ後にメニューが自動で組み直されない |
| 個人文脈の無視 | シューズ・主観的体調・蓄積疲労がメニューに入らない |
どれか1つであれば、工夫で乗り越えられます。
でも4つが重なると、「自分でツールを作るしかない」という結論になりました。
タイムが伸び悩んでいる。
練習はしているのに結果が出ない。
夏になると急に崩れる。
計画通りに走れない週が続く——これらは意志の問題ではなく、ツールの問題である場合がほとんどです。
その詳細は下記にまとめています。

まとめ
既存のランニングツールは優秀です。
記録・可視化・基本的なメニュー提案は十分にできます。
ただし「自分の状況に合わせて動的に導いてくれる」という機能は、現状どのツールにもありません。
「ツールを使いこなせていない自分が悪い」という感覚は、おそらく間違いです。
ツールが個人の文脈に対応していないだけです。
この記事で使ったアイテム
カシオ モーションセンサー(Runmetrix) 既存ツールの「分析の限界」を最も補完してくれるのがRunmetrixです。約30項目のフォームデータから、ウォッチでは見えない課題を可視化できます。



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