- フォーム改善の次に見えた新たな疑問|同じフォームのはずが、シューズで数値が変わる理由とは?
- 検証の前提|モーションセンサーとGarminを併用して、多角的にデータを取得
- 比較した4足のシューズ|それぞれ異なる設計思想を持つトレーニングシューズ
- ChatGPTで”データの翻訳”をしてもらったら、見えてきたこと
- フォーム改善の前後で何が変わったか|数値で見る走りの変化
- 4足の実測データ比較|屋内外で見えたシューズごとの”フォーム誘発特性”
- 🟢 エボライド スピード3|省エネ・効率型の”リズム走”シューズ
- 🔵 ボストン 12|推進力重視の”押し出し型”シューズ
- 🟣 ディヴィエイト ニトロ3|”自然体の効率”を実現するバランス型シューズ
- 🟠 ヴェロシティ ニトロ3|フォーム修正・軸づくり特化型シューズ
- ChatGPTで「4足同時比較」をしてみた結果|相関分析で見えた使い分け戦略
- Runmetrixデータで見た4足の役割分担マトリクス
- 実践編|週間ローテーション戦略とトレーニングプラン
- 現時点での結論|数値が語る”フォームとシューズの最適な組み合わせ”
- Runmetrixデータは”感覚の裏付け”になる|データと対話することで見えてくるもの
- ChatGPTを使えばあなたもデータ分析できる|専門知識がなくても始められる3ステップ
- まとめ|フォームとシューズの最適化は”データと対話”から始まる
- この記事を読んだあなたへ:今日から始められる3つのアクション
- 関連記事|Runmetrix活用シリーズ
- おわりに|データと対話しながら、自分だけの「最適な走り」を見つける
フォーム改善の次に見えた新たな疑問|同じフォームのはずが、シューズで数値が変わる理由とは?
以前の記事でRunmetrixを使ったフォーム改善に取り組み、ピッチ178→186spm、上下動10.5→8.8cmという数値改善を実現しました。
骨盤の前傾角を意識し、体幹を引き上げるドリルを継続。接地時間も270ms→245msへと短縮し、「脚の抜けがスムーズになった」という感覚的な変化も実感できるようになりました。
ところが、改善後のフォームで走り続けるうちに新たな疑問が浮上します。
「同じフォームのはずなのに、シューズによって数値が変わる?」
例えば:
- ASICS EvoRide Speed 3(エボライド スピード 3)では心拍が3〜5拍低い
- adidas Adizero Boston 12(ボストン 12)では上下動が1cm増える
- PUMA Deviate Nitro 3(ディヴィエイト ニトロ 3)ではピッチが自然と188に上がる
これは「フォームが崩れている」のか、それとも「シューズの特性が、特定のフォームを引き出している」のか
その答えを探るため、現在ローテーションしている4足のシューズを、屋内外で徹底計測してみることにしました。
検証の前提|モーションセンサーとGarminを併用して、多角的にデータを取得
今回の分析では、Runmetrixに加え、Garmin Forerunner 265との連携によるランダイナミクス指標も併用しています。
使用デバイス

カシオ モーションセンサー(CMT-S20R-AS)+ Runmetrixアプリピッチ、ストライド、上下動、接地時間、骨盤角度などを計測

Garmin Forerunner 265
心拍数、VO2MAX推定値、ランダイナミクス(上下動比、接地時間バランス)
計測条件
- 距離: 5〜10km
- ペース: 4:25〜5:30/km(メニューに応じて変動)
- 環境:
- 屋外:平坦なアスファルト路面
- 屋内:トレッドミル、傾斜0.5〜1.0%
- 期間: 2025年8月〜9月
前回の記事で体感したように、Runmetrix単体では見えない心拍変動や接地バランスを、Garminのランダイナミクスで補完。複数の指標を組み合わせることで、「シューズがフォームに与える影響」をより多角的に捉えることができました。
比較した4足のシューズ|それぞれ異なる設計思想を持つトレーニングシューズ
現在ローテーションしている4足は、それぞれ異なる設計思想を持っています。
| シューズ名 | 主な特徴 | 当初の使用目的 |
|---|---|---|
🟢 ASICS EvoRide Speed 3(エボライド スピード 3) |
軽量・効率重視。ロッカー形状で上下動を抑える | ロング走・Eペース巡航 |
🔵 adidas Adizero Boston 12(ボストン 12) |
反発プレート搭載。推進力の強い「押し出す走り」 | テンポ走・LT走 |
🟣 PUMA Deviate Nitro 3(ディヴィエイト ニトロ 3) |
カーボンプレート+NITROフォーム。ピッチとストライドの両立 | テンポ走・Mペース走 |
🟠 PUMA Velocity Nitro 3(ヴェロシティ ニトロ 3) |
安定重視。接地感がわかりやすくフォーム確認向き | 回復走・フォーム修正 |
以前の記事で「トレッドミル計測の精度」を求めてRunmetrixを導入したわけですが、今回はその強みを活かし、4足それぞれが「どんなフォームを誘発するのか」を明らかにしていきます。
ChatGPTで”データの翻訳”をしてもらったら、見えてきたこと

Runmetrixから得られるデータは膨大です。ピッチ、ストライド、上下動、接地時間、骨盤角度、左右バランス……これらの数値が、一体何を意味しているのか。
前回の記事でも書いたように、「減速量」「スムーズな重心移動」といった指標は、数値だけ見ても理解が難しいものでした。
そこで活用したのがChatGPTです。
実際の活用プロセス

毎回のランニング後、RunmetrixとガーミンのデータをまとめてChatGPTに入力。以下のようなプロンプトで分析を依頼しました。
【実際のプロンプト例】
以下は同一ランナーが異なるシューズで計測したRunmetrixデータです。
シューズ特性とフォーム指標の相関を分析し、
各モデルの"得意な走り方"を推定してください。
- シューズA: ピッチ188、上下動8.4cm、心拍140
- シューズB: ピッチ182、上下動9.8cm、心拍145
...
すると、ChatGPTは次のような仮説を返してきました:
この分析をもとに、「どのシューズで、どんな練習をすべきか」という戦略が見えてきたのです。
特に有効だったのは、複数回の計測データを時系列で入力すること。
フォーム改善の前後比較や、疲労時のフォーム崩れパターンまで、ChatGPTが言語化してくれました。
専門知識がなくても、データさえあれば「自分専属の分析コーチ」が手に入る。
これがChatGPT活用の最大のメリットでした。
フォーム改善の前後で何が変わったか|数値で見る走りの変化
本題に入る前に、改善前後のベースラインを確認しておきます。
改善前(2025年9月)
- 平均ピッチ: 176〜178spm
- 上下動: 10.5cm前後
- 接地時間: 270ms前後
- 骨盤の前傾角: 浅い(Runmetrixスコア: 60〜64点)
- 左右バランス: 右骨盤の動きが弱い、接地時の沈み込みに左右差
前回の記事で指摘されたように、典型的な「ストライドで押すフォーム」でした。数値だけ見れば悪くないように思えますが、実際には:
- 終盤でフォームが崩れやすい
- 疲労時に上下動が急増
- 脚の抜けが悪く、接地時間が延びる
という課題がありました。
改善後(2025年10月)
- 平均ピッチ: 183〜186spm
- 上下動: 8.8〜9.2cm
- 接地時間: 245ms前後
- 骨盤の前傾角: 改善(Runmetrixスコア: 65〜71点)
- 左右バランス: ストライドの左右差が縮小
以前の記事で書いたように、Garminやめようかと思った瞬間があったほど、Runmetrixのコーチング機能は具体的でした。数字の変化は小さく見えますが、走りの感覚はまったく異なります。
- 脚の抜けがスムーズになり、接地から次の蹴り出しまでがスムーズ
- 終盤でもフォームが崩れにくくなり、ネガティブスプリットが可能に
- 心拍数が同ペースで3〜5拍低下し、省エネ走行が実現
この「改善後のフォーム」を基準として、4足のシューズがどのような影響を与えるかを検証していきます。
4足の実測データ比較|屋内外で見えたシューズごとの”フォーム誘発特性”
ここからが本題です。改善後のフォームで、各シューズの特性がどう数値に現れるのか。屋内(トレッドミル)と屋外(アスファルト)の両方で計測しました。
データ一覧表
| 指標 | 改善前(平均) | 🟢 エボライド スピード 3 |
🔵 ボストン12 | 🟣 ディヴィエイト ニトロ3 |
🟠 ヴェロシティ ニトロ3 |
|---|---|---|---|---|---|
| ピッチ (spm) | 176〜178 | 180〜188 | 182〜185 | 188 | 175〜182 |
| 上下動 (cm) | 10.5 | 8.8〜9.2 | 9.5〜10.0 | 8.4 | 9.0〜9.5 |
| 接地時間 (ms) | 270 | 240〜250 | 250〜260 | 245 | 260〜270 |
| 心拍数 (bpm) | – | 138〜142 | 145〜148 | 140 | 140〜143 |
| ストライド (m) | – | 1.05〜1.08 | 1.12〜1.15 | 1.10 | 1.03〜1.06 |
※ペース帯は4:30〜5:00/kmで統一(練習内容により変動)
計測環境による違い

屋内(トレッドミル)の特徴:
- ピッチが安定しやすい(±2spm以内)
- 上下動が屋外より0.3〜0.5cm小さい
- 心拍数が同ペースで2〜3拍低い(気温・風の影響なし)
導入記事で書いたように、トレッドミル計測の精度向上がRunmetrix購入の決め手でした。今回の検証でも、その精度の高さが活きています。

屋外(アスファルト)の特徴:
- 路面の微細な変化でストライドが変動
- 風や気温の影響で心拍数が上昇
- 実戦に近い条件でのフォーム安定性を確認できる
今回は両方のデータを組み合わせることで、「シューズ本来の特性」と「環境適応力」の両面を評価しました。
🟢 エボライド スピード3|省エネ・効率型の”リズム走”シューズ

Runmetrixデータの特徴
- ピッチ: 180〜188spm(屋内外で安定)
- 上下動: 8.8〜9.2cm(4足中最小クラス)
- 心拍数: 同ペースで3〜5拍低い
- 接地時間: 240〜250ms
走りの傾向と発見
トレッドミルでも屋外でも共通していたのは、ピッチが高く安定し、上下動が小さい点です。このモデルは「脚を回す」リズム型フォームを自然に引き出し、骨盤の前傾を保ちつつ上下動を抑えることに長けています。
ロッカー形状(つま先の反り上がり)が、足首の負担を軽減し、自然な重心移動を促進。結果として、意識しなくても効率的なフォームが維持されます。
Garminランダイナミクスとの照合
- 上下動比: 7.2〜7.8%(理想値の範囲内)
- 接地時間バランス: 50.2/49.8(ほぼ左右対称)
この接地時間の左右対称性は、左右差改善の記事で目指していた理想的な状態です。エボライド スピード3のロッカー形状が、自然と左右バランスを整えてくれる効果があることが確認できました。
また、エボライド スピード 3の詳細レビューでも書いたように、このシューズの「左右差を自然と整える」特性は、フォーム改善に非常に有効です。
課題と対策
ただし、ペースが4:50/kmを超えて遅くなると、ストライドが急に狭くなり、接地時間が増える傾向も見られました。これはロッカー形状の特性上、「一定以上のペースで転がす」ことで真価を発揮するため。
対策として:
- 週1回、4:30〜4:40/kmのテンポ巡航を組み込む
- 反発を使った蹴り出しを意識するドリルを追加
適性メニュー
- ロング走(20〜30km、5:00〜5:20/km)
- Mペース走(10〜15km、4:50〜5:10/km)
- 距離耐性が必要な場面全般
🔵 ボストン 12|推進力重視の”押し出し型”シューズ

Runmetrixデータの特徴
- ピッチ: 182〜185spm(他より若干低め)
- 上下動: 9.5〜10.0cm(4足中最大)
- 心拍数: 145〜148bpm(負荷高め)
- ストライド: 1.12〜1.15m(4足中最大)
走りの傾向と発見
Garminのランダイナミクス指標を見ると、ボストンは他モデルより上下動が約0.5〜1cm大きく、接地衝撃もやや強め。これはミッドソールの硬めの反発プレート(Energyrods)と、骨盤を深く前傾させた推進型フォームが影響しています。
「脚を押し出す」動作が得意で、ピッチよりもストライドが主導。4:20〜4:45/km帯でピタリとハマり、テンポ走やLT走には理想的です。
Garminランダイナミクスとの照合
- 上下動比: 8.5〜9.2%(やや高め)
- 接地時間バランス: 51.5/48.5(右脚優勢)
シューズ選びと左右差の記事で検証したように、ボストン 12は「左右差が最も小さい安定感」を示すシューズです。ただし今回の計測では、疲労時に右脚優勢の傾向が見られました。これは推進力を得るために右脚への負荷が高まっていることを示唆しています。
課題と対策
ただし、疲労時は骨盤が後傾し、上下動が急増(11cm超)。接地時間も270ms以上に延び、「脚が抜けない」感覚が強まります。
対策として:
- 体幹保持と骨盤安定のトレーニングを強化
- プランク、デッドバグなどのコアワークを週2回
- 疲労時は無理に使わず、エボライドやヴェロシティに切り替え
適性メニュー
- LT走・閾値走(20〜30分、4:25〜4:35/km)
- テンポ走(40〜60分、4:40〜4:50/km)
- スピード刺激が必要な質的練習
🟣 ディヴィエイト ニトロ3|”自然体の効率”を実現するバランス型シューズ

Runmetrixデータの特徴
- ピッチ: 188spm(4足中最高、かつ最安定)
- 上下動: 8.4cm(左脚)、7.0cm(右脚)※計測区間で変動
- 心拍数: 140bpm(安定)
- ストライド: 1.10m(バランス型)
- 接地時間: 245ms(スムーズな切り替え)
走りの傾向と発見
今回のトレッドミル計測(初計測)では、全体的に効率のよい走りを示すデータが得られました。
特筆すべきは、ピッチの安定性と上下動の低さ。屋内という条件下でもリズムが乱れず、心拍数も一定ペースで推移。「力まず速く」を体現するフォームが確認できました。
骨盤の前傾角も安定しており、左右バランスに大きな偏りはなし。接地時間は245ms前後で、脚の引きつけと押し出しの切り替えがスムーズ。上下動が9cmを切る区間では心拍効率が特に良く、走りの省エネ性が際立ちました。
Garminランダイナミクスとの照合
- 上下動比: 7.5〜8.0%(理想的)
- 接地時間バランス: 50.5/49.5(ほぼ均等)
このデータから見えてくること
「ピッチでリズムを刻みながら、ストライドを無理なく伸ばせる」自然体の走り。つまり、ディヴィエイト ニトロ3は”意識しなくても効率が整う”万能モデルであることが確認できました。
適性メニュー
- テンポ走(4:30〜4:45/km)
- Mペース走(4:50〜5:10/km)
- レースペース走(4:20〜4:30/km)
- 質的練習全般
現時点で最も汎用性が高く、レースの主軸候補として位置づけています。
🟠 ヴェロシティ ニトロ3|フォーム修正・軸づくり特化型シューズ

Runmetrixデータの特徴
- ピッチ: 175〜182spm(4足中最低)
- 上下動: 9.0〜9.5cm(ばらつき小)
- 接地時間: 260〜270ms(長め=安定重視)
- 心拍数: 140〜143bpm(穏やか)
走りの傾向と発見
ピッチはやや低めですが、上下動のばらつきが少なく、接地時間が長い=接地が安定しているのが特徴。
反発が弱い分、「シューズに頼らず自分の脚で走る」感覚が強い。フォーム改善記事で意識した「減速量」や「スムーズな重心移動」を確認するには最適です。
Garminランダイナミクスとの照合
- 上下動比: 8.0〜8.5%(標準的)
- 接地時間バランス: 50.0/50.0(完全な左右対称)
役割と使い方
スピード練習には不向き。しかし、走りの基礎を整える”リセットシューズ”としては非常に優秀。
特に以下のような場面で活用:
- 疲労時の回復走(5:20〜5:40/km)
- フォーム修正を目的とした意識走
- 筋トレ後の軽ジョグ
週2回のリカバリー走ではこのモデルを多用し、「軸を作り直す時間」として位置づけています。
適性メニュー
- 回復走(5:00〜5:40/km)
- フォームドリル
- 筋トレ後の動的回復
ChatGPTで「4足同時比較」をしてみた結果|相関分析で見えた使い分け戦略
ここまでの個別分析を踏まえ、4足分のRunmetrixデータを一度にChatGPTに入力し、相関分析を依頼しました。
実際のプロンプトと出力
【プロンプト】
以下は同一ランナーが4種のシューズで計測したRunmetrixとGarminのデータです。
シューズ特性とフォーム指標の相関を分析し、
各モデルの"得意な走り方"と"使い分け戦略"を提案してください。
- エボライドS3: ピッチ188、上下動8.8cm、心拍138、上下動比7.5%
- ボストン12: ピッチ182、上下動9.8cm、心拍145、上下動比8.8%
- ディヴィエイトN3: ピッチ188、上下動8.4cm、心拍140、上下動比7.5%
- ヴェロシティN3: ピッチ178、上下動9.2cm、心拍140、上下動比8.2%
ChatGPTの回答(要約):
エボライドS3とディヴィエイトN3の共通点
エボライドS3
ディヴィエイトN3
- 高ピッチ(188spm)と低上下動の組み合わせは、カーボンプレートやロッカー形状による「転がす走り」を示唆
- 心拍効率も良好で、長時間走行に適している
- 使い分け: エボライドは距離重視、ディヴィエイトは距離+スピードの両立
ボストン12の特異性

- 上下動が大きいのは欠点ではなく、「深い前傾と強い蹴り出し」による推進力獲得の結果
- 心拍数の高さは負荷の証。質的練習での使用が適切
- 注意点: 体幹が弱いと上下動がさらに増大。コアトレーニング必須
ヴェロシティN3の位置づけ

- ピッチが低く接地時間が長い=「じっくり接地して軸を確認する走り」
- 反発が弱いため、フォーム修正やリカバリーに特化
- 戦略: 週2回の回復走で軸を作り直し、他の3足で質を高める
この分析結果をもとに、週間ローテーション戦略を構築しました。
Runmetrixデータで見た4足の役割分担マトリクス
数値を総合したマトリクスを改めて整理すると、以下のようになります。
| シューズ | 走りの性格 | 得意ペース帯 | 適性メニュー | フォーム傾向 | 向いている走り方 |
|---|---|---|---|---|---|
| 🟢 エボライドS3 | 省エネ・効率重視型 | 4:50〜5:20/km | ジョグ、M走、ロング走 | ピッチ重視、上下動抑制 | 軽快に刻む省エネ走 |
| 🔵 ボストン12 | 推進・反発重視型 | 4:20〜4:45/km | テンポ走、LT走 | 前傾・押し出し強め | “押して進む”走り |
| 🟣 ディヴィエイトN3 | バランス型 | 4:20〜4:45/km | テンポ走、M走、レース | 骨盤連動が自然 | 力まず加速する走り |
| 🟠 ヴェロシティN3 | 安定・軸重視型 | 5:00〜5:40/km | 回復走、フォーム修正 | 接地安定、上下動やや大 | 軸づくり重視の安定走 |
このマトリクスを見れば一目瞭然。反発・推進の「速さ系」と、安定・省エネの「整え系」が見事に対をなしています。
4足を組み合わせることで、どんな練習メニューにも無理なく対応可能です。
実践編|週間ローテーション戦略とトレーニングプラン
現状(サブ3.15狙い・週6走)を前提にした、実際の運用プランを紹介します。
VO2MAXの回復段階でもオーバートレーニングに陥らず、負荷の分散と質的トレーニングの両立をねらっています。
| 曜日 | 内容 | ペース目安 | 使用シューズ | 狙い |
|---|---|---|---|---|
| 月 | 下半身筋トレ+Eペースジョグ | 5:10〜5:30 | 🟠 or 🟢 | 軸づくり・回復 |
| 火 | テンポ走(40〜60分) | 4:40〜4:50 | 🟣 or 🔵 | 有酸素LT刺激 |
| 水 | Mペース走(10〜15km) | 4:55〜5:10 | 🟢 or 🟠 | ボリューム確保 |
| 木 | 上半身筋トレ+ジョグ | 5:00〜5:20 | 🟠 | 回復と姿勢補正 |
| 金 | LT走 or 閾値走(20〜30分) | 4:25〜4:35 | 🟣 | 持久スピード強化 |
| 土 | ロング走(15〜20km) | 4:50〜5:10 | 🟢 or 🟣 | 耐久走力強化 |
| 日 | 休養 or 軽ジョグ | – | 🟠 | 完全回復 |
ローテーションのポイント
- 週内で「シューズの性格を重ねない」
- ボストンとディヴィエイトを交互に使い、反発を使う練習を週2回
- エボライドとヴェロシティでフォームリセット・回復を挟む
- 疲労を抜きながら走りの精度を維持
- 火曜の質的練習後、水曜は省エネモデル(エボライド)で距離を稼ぐ
- 木曜はヴェロシティで完全リカバリー
- 週末のロング走で総合力を試す
この戦略によりRunmetrixで毎週フォームを確認し、微調整を繰り返していくプランです。
現時点での結論|数値が語る”フォームとシューズの最適な組み合わせ”
4足のRunmetrixデータを追い続けてわかったのは、「速く走ること」よりも「走りの整合性」が重要だということでした。
フォームとシューズの特性がかみ合えば、VO2MAXが上がるよりも先に“走りの質”が変化します。
各シューズの現状評価と課題
| シューズ | 現状の役割 | 発見された課題 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 🟢 エボライドS3 | 距離耐性・省エネ走 | ペースが遅いとストライド低下 | 週1回のテンポ巡航で反発を再習得 |
| 🔵 ボストン12 | スピード刺激 | 疲労時に上下動増大(11cm超) | 体幹・骨盤安定強化、疲労時は使用回避 |
| 🟣 ディヴィエイトN3 | レース・質的練習の軸 | 現時点で大きな課題なし | 軸安定意識を継続、レース本番候補 |
| 🟠 ヴェロシティN3 | フォーム修正・回復 | 推進力不足(スピード練習不可) | 回復専用として特化運用を継続 |
現段階ではディヴィエイト ニトロ3が中心軸。ボストン12は閾値走で負荷をかける”刺激用“、エボライドS3は巡航・距離走の”省エネ用“、ヴェロシティニトロ3は“基礎再構築用“として定着させていきたいと考えています。
数値で見る「最適な組み合わせ」
ChatGPTの分析と実走データを組み合わせた結果、以下のようなシューズ×ペース帯の最適マップが見えてきました。
ペース4:20〜4:35/km(LT〜閾値走):
- 第1選択: 🟣 ディヴィエイトN3(効率×スピードの両立)
- 第2選択: 🔵 ボストン12(推進力重視、体幹が万全な時のみ)
ペース4:40〜5:00/km(テンポ走・M走):
- 第1選択: 🟣 ディヴィエイトN3(万能性)
- 第2選択: 🟢 エボライドS3(長時間巡航の省エネ性)
ペース5:00〜5:30/km(ジョグ・ロング走):
- 第1選択: 🟢 エボライドS3(距離耐性×心拍抑制)
- 第2選択: 🟠 ヴェロシティN3(フォーム意識強化時)
ペース5:30/km以上(回復走):
- 専用: 🟠 ヴェロシティN3(軸づくり・接地確認)
Runmetrixデータは”感覚の裏付け”になる|データと対話することで見えてくるもの
これまで「フォーム改善」を目的に始めたモーションセンサー計測は、結果的にシューズの最適運用マップを導きました。
つまり、数値を追うこと自体が目的ではなく、「どう走れば、どの靴が活きるか」を見つけるための手段です。
なぜRunmetrixが有効だったのか
- 感覚を数値で確認できる
- 「今日は調子がいい」→ピッチ188、上下動8.5cm
- 「なんか重い」→ピッチ175、上下動10.2cm
- 感覚と数値の一致が、再現性を高める
- シューズの特性が”見える化”される
- 同じペースなのに心拍が5拍違う→省エネ性の差
- 上下動が1cm違う→推進力獲得の方法の違い
- 数値比較で「なんとなく」が「確信」に変わる
- 改善の方向性が明確になる
- 「骨盤の前傾が浅い」→体幹ドリル強化
- 「左右バランスが偏っている」→片脚スクワット追加
- 具体的なアクションに落とし込める
以前の記事でも書きましたが、Runmetrixの最大の価値は「走りの言語化」にあります。今回のシューズ比較で、その価値がさらに深まりました。
ChatGPTを使えばあなたもデータ分析できる|専門知識がなくても始められる3ステップ
「データ分析なんて難しそう……」と思うかもしれませんが、ChatGPTがあれば専門知識は不要です。
実践的なChatGPT活用法
ステップ1: データを記録する
- Runmetrixアプリのスクリーンショット
- または手動で主要指標をメモ(ピッチ、上下動、接地時間、心拍数)
ステップ2: ChatGPTに入力する
以下は私のRunmetrixデータです。
フォームの特徴と改善点を教えてください。
- 日付: 2025/01/15
- シューズ: エボライド スピード3
- 距離: 10km
- ペース: 5:00/km
- ピッチ: 185spm
- 上下動: 9.0cm
- 接地時間: 250ms
- 心拍数: 142bpm
ステップ3: 質問を重ねる
- 「この数値は効率的ですか?」
- 「上下動を減らすにはどうすれば?」
- 「他のシューズと比較するとどうですか?」
ChatGPTは過去の会話を記憶しているので、複数回のデータを入力すれば時系列分析も可能です。
より高度な活用:複数シューズの比較分析
以下は同じランナーが3種類のシューズで走ったデータです。
各シューズの特性と、使い分け戦略を提案してください。
【シューズA】
- ピッチ: 188, 上下動: 8.5cm, 心拍: 140
【シューズB】
- ピッチ: 182, 上下動: 9.8cm, 心拍: 145
【シューズC】
- ピッチ: 178, 上下動: 9.2cm, 心拍: 140
このように聞けば、今回の記事のような分析結果が得られます。
まとめ|フォームとシューズの最適化は”データと対話”から始まる
今回の検証を通じて、以下の3つの結論に至りました。
シューズは「フォームを引き出す」道具である
シューズは単なる「履物」ではなく、特定のフォームを誘発・強化する装置です。
- エボライドS3 → 高ピッチ・低上下動の「転がす走り」
- ボストン12 → 深い前傾・強い蹴り出しの「押し出す走り」
- ディヴィエイトN3 → 自然体でバランスの取れた「力まない走り」
- ヴェロシティN3 → 安定接地で軸を確認する「整える走り」
自分のフォームに合ったシューズを選ぶのではなく、目指すフォームに合わせてシューズを使い分ける。これが最適化の鍵でした。
Runmetrixは「感覚の翻訳機」になる
「今日は調子がいい」「なんか重い」という感覚を、数値で確認・記録できる。それがRunmetrixの最大の価値です。
さらにGarminとの連携で、心拍数やVO2MAX推定値と組み合わせれば、「なぜ調子がいいのか」まで言語化できます。
データがあれば、ChatGPTが「翻訳」してくれる。専門知識がなくても、自分専属の分析コーチが手に入ります。
最適化は「完璧」ではなく「継続的な調整」である
今回の分析結果も、あくまで現時点での最適解に過ぎません。
- フォームは日々変化する
- シューズは走行距離とともに劣化する
- 体調やトレーニング負荷も変動する
だからこそ、週1回のRunmetrix計測を習慣化し、数値の変化を追い続けることが重要です。
「完璧なフォーム」を目指すのではなく、「今の自分に最適な走り」を継続的に見つけ続ける。それが、Runmetrixを使った最適化の本質だと気づきました。
この記事を読んだあなたへ:今日から始められる3つのアクション
まずは1足でRunmetrixを試す|自分のフォーム基準値を知ることから
シューズローテーションの前に、まずは「自分のフォーム基準値」を知ることが重要。
普段履いているシューズ1足で、週1回Runmetrixを装着して走ってみてください。3〜4回計測すれば、自分の平均値(ピッチ、上下動、接地時間など)が見えてきます。
参考記事:
- Garminユーザーが選んだCASIO × ASICSモーションセンサー|実機レビューと使い心地
- トレッドミル計測の精度、初回スコア62点の衝撃、導入の決め手を詳しく解説
- 50代ランナー必見|CASIO × ASICSモーションセンサーで分かったフォーム改善の実体験レビュー
- 2週間で11回計測、「減速量」という指標の発見、スピード別フォーム検証の記録
Garmin併用で”裏付け”を得る|心拍・VO2MAX・ランダイナミクスとの相関を見る
Runmetrix単体でも十分有用ですが、Garminのランダイナミクス指標と組み合わせることで、データの信頼性が格段に上がります。
特に:
- 心拍数との相関(省エネ性の確認)
- VO2MAX推定値の変化(体力向上の追跡)
- 上下動比・接地時間バランス(左右差の確認)
これらを組み合わせることで、「なぜこの数値なのか」が見えてきます。
参考記事:
- Garminやめようかと思った瞬間 ― Casio × ASICS モーションセンサー 2回目計測で解放された”本気のパーソナルコーチ”
- 3D動画でのフォーム比較、59日分の自動トレーニングプログラム、デバイス使い分けの考察
ChatGPTで「自分専用の分析レポート」を作る|データの意味を言語化する
この記事のような分析は、特別な知識がなくても可能です。
今日から始められる3ステップ:
- Runmetrixで3〜5回走る(同じシューズでOK)
- データをChatGPTに入力する
- 「フォームの特徴は?」「改善点は?」と質問する
あなたのRunmetrixデータをChatGPTに入れてみてください。きっと新しい発見があるはずです。
関連記事|Runmetrix活用シリーズ
📊 Runmetrix導入・基礎編
Garminユーザーが選んだCASIO × ASICSモーションセンサー|実機レビューと使い心地
- モーションセンサー選びで1年間迷った理由
- トレッドミル対応が購入の決め手
- 初回テスト:夏の河川敷での計測結果
- 初回スコア62点の衝撃と具体的な改善点
🎯 Runmetrix活用・応用編
Garminやめようかと思った瞬間 ― Casio × ASICS モーションセンサー 2回目計測で解放された”本気のパーソナルコーチ”
- 2回の計測で解放された専属コーチング機能
- 3D映像で見る「現在の自分」が衝撃的すぎた
- 59日分のトレーニングプログラムが自動生成
- Apple Watch+CASIOか、ガーミン継続か
💪 フォーム改善・実践編
50代ランナー必見|CASIO × ASICSモーションセンサーで分かったフォーム改善の実体験レビュー
- 50代ランナーが直面する現実と効率的な練習の必要性
- 前傾姿勢の試行錯誤:総合スコアが逆に下がった意外な原因
- スピード別フォーム検証:トレッドミルで見えた減速の壁
- 2週間で11回計測して分かった「減速量」という指標の重要性
おわりに|データと対話しながら、自分だけの「最適な走り」を見つける
ランニングは感覚のスポーツですが、感覚を数値で確認できる時代になりました。
Runmetrixは、その架け橋として非常に優秀なツールです。そしてChatGPTは、その数値に「意味」を与えてくれる存在。
この2つを組み合わせることで、誰もが自分専属のランニングコーチを手に入れることができます。
あなたも、データと対話しながら、自分だけの「最適な走り」を見つけてみませんか?
サブ3.15への道は、まだ続きます。

🔵 adidas Adizero Boston 12

コメント
いやはや、素晴らしい!
生きた多変量解析ですね。
極度に幅を振ったシューズ(例えばゲルカヤノとか)もここに加えた場合、俯瞰的な解析はどうなるのか等に興味を持った次第です。
また同時に、chatGPTの悪魔性にも息を飲んだ次第です。
ブログ更新、楽しみにしております!
コメントいただきありがとうございます。
実はこの記事を書きながら、私も次の候補を考えておりました。
あえて薄底、ターサーRP3あたりが気になっております!
引き続きご愛顧くださいますよう、どうぞ宜しくお願いいたしますm