「このコース、坂があるみたいだけど、目標タイムはこれまで通りでいいのか?」
エントリーしたレースのコース詳細を見て、そう迷ったことはありませんか。
平坦なコースで立てた自己ベストや目標ペースは、起伏のあるコースにそのまま当てはめていいとは限りません。
かといって、実際に走ってみるまで正確な影響はわからない、というのも心もとないもの。
そこで役立つのが、Garmin PaceProとCOROSのペース戦略機能です。
どちらも、コースのGPXデータさえあれば、標高の起伏を踏まえた上で「このペース設定なら、どの区間でどれくらい速度が変わるか」を走る前にシミュレーションできます。
この記事では、実際に自分がエントリーしたMINATOシティハーフマラソン(起伏のあるコース)を例に、Garmin・COROS両方のペース戦略機能を使って目標タイムを組み立てた手順を、そのまま紹介します。
目標タイムがどのくらいであっても、参考にしていただけると思います。
今回使ったガジェット・アプリ
COROS PACE 4/COROSアプリ
Garmin Forerunner 265/Garmin Connect
きっかけは、コース詳細で見つけた「ゴール手前の坂」
念のため、MINATOシティハーフマラソンのコース詳細を調べてみました。
すると、コースには事前には気にしていなかった程度のアップダウンがあることに気づきました。
累積上昇は72m、区間によっては1kmの中で15〜16m上昇する箇所もあり、大きな山場というほどではないものの、決して無視できる起伏ではありません。

ただ、同じ程度の高低差でも、レース前半と後半では体感の負担がまったく違います。
序盤なら気にもならない起伏が、脚が売り切れた後半に来ると一気に「壁」になることは、走ったことのある人なら経験があるはずです。
MINATOシティハーフマラソンのコースを見ると、コース内に上り坂が2箇所あることに加えて、ちょうどゴール手前にも上り坂が用意されていることが分かりました。
合計3箇所の上りのうち、一番脚が売り切れているタイミングで、一番堪える場所(ゴール手前)に坂がある構成です。
ここで、素直な疑問が浮かびました。
このコースで、これまで通りの目標タイムは現実的なのだろうか。
感覚だけで判断するのは心もとないので、Garmin・COROSのペース戦略機能を使って、実際にシミュレーションしてみることにしました。
分析の前提:まずコースのGPXデータを自作する

Garmin・COROSどちらのペース戦略機能も、コースのGPXデータを読み込ませるところから始まります。
ただ、その前提として一つ、想像以上に骨が折れた作業がありました。
コースのGPXデータ作りです。
納得のいく精度を求めて、時間をかけて一からコースデータを自作しました。地図上の道筋をなぞるだけでは済まない、地道な作業でした。
Googleマップをはじめ、GPXデータが作成できそうなアプリをいくつか検証し、最終的にはStravaのコース作成機能を使って組み立てました。
ここで苦労した点が2つあります。
1つ目は、最初にラン設定で作成を進めていたところ、原則として歩道しか経路として設定できず、実際のコースよりも走行距離が大幅に伸びてしまったことです。
そこでバイク設定に切り替えたところ、車道をトレースできるようになりました。ただし2つ目の壁として、実際のレースコースには車道を逆走する区間もあり、バイク設定でも忠実に再現しきれない箇所が残りました。
このGPXデータができてしまえば、あとの手順はシンプルです。
- 自作したGPXデータを、Garmin ConnectのPacePro(ペース戦略)にインポート
- COROSアプリでも同じコースのペース戦略を確認
- 標高プロフィールを踏まえた上で、目標タイムを何パターンか試す
最初にサブ90(1:30:00)で設定してみたところ、平均ペースは4’14″/km、平均出力ペースは4’12″/kmという数字が出ました。これまでのフラットコースでの感覚のまま設定した数字です。
ただ、区間ごとのラップを見ていくと、両方のツールが同じ場所で示し合わせたように失速していました。
| 区間 | COROSの区間ペース | Garminの区間ペース |
|---|---|---|
| 3km | 4’23″/km(上昇6m) | 4’11″/km |
| 5km | 4’06″/km | 4’20″/km |
| 9km | 4’35″/km(上昇15m) | 4’28″/km |
| 14km | 4’26″/km | 4’13″/km |
| 21km | 4’34″/km(上昇15m) | 4’20″/km |
とくに9km地点は、COROS・Garminどちらのツールでも1kmあたり4’28″〜4’35″まで落ち込んでいて、この区間に上り坂があることがデータの上でも一致していました。感覚では気づいていなかった中間地点の坂です。
ゴール手前の21km地点も、COROS側で上昇15mを記録しており、終盤にもう一段、坂で失速するタイミングがあることが見えてきました。
サブ90ペースのままこの2箇所の坂を越えようとすると、区間によっては1kmあたり20秒以上ペースが落ち込む計算になります。これが、ペース戦略機能を使う一番のメリットです。
走る前に、無理のある目標設定に気づける。
コースの起伏(特に9km付近とゴール手前の上り)を踏まえてシミュレーションを重ねていくと、サブ90の設定はかなり無理をしていることが見えてきました。
シミュレーション結果の一例:私の場合は「1:35:00」に着地した

私自身は、最終的に目標タイムを 1:35:00 に調整しました。
- 平均ペース:4’29″/km
- 平均出力ペース:4’26″/km
- 累積上昇:72m
サブ90から見ると、1kmあたりおよそ14秒、5分近い下方修正です。
ここはあくまで私個人の結果なので、目標タイムがサブ4でもサブ5でも、同じ手順でシミュレーションすれば、自分のコースに合った現実的な数字が見えてきます。
1:35:00達成に向けた通過タイム早見表
平均ペース4’29″/kmでイーブンに刻んだ場合の、距離別の通過タイム目安です。
実際にはコースの起伏でこの通りにはならない(後述)ので、あくまで基準タイムとして使っています。
| 距離 | 通過タイム目安 |
|---|---|
| 5km | 22:25 |
| 10km | 44:50 |
| 15km | 1:07:15 |
| 20km | 1:29:40 |
| ハーフ(公式21.0975km) | 1:34:35 |
自作GPX(21.22km)ベースでの合計タイムが1:35:00なので、公式距離ちょうどで見ると若干前倒しの1:34:35が目安になります。
この差は、GPX自作時にどうしても生まれる距離の誤差分です。
後半勝負は危険。起伏コースで強度を「欲張らない」設定にした理由
ペース戦略の設定については、少し説明が必要です。
GarminもCOROSも、設定方法は「距離」と「コース」からのいずれかを設定できます。

これまで私は、「フルマラソン」「ハーフマラソン」といった距離だけを指定するシミュレーションしか使ったことがありませんでした。
そのときに知ったのが、ペース配分にネガティブスプリット(後半にペースを上げる)、イーブンペース(一定ペース)、ポジティブスプリット(前半に貯金を作る)の3パターンが選べるという仕様です。
これはCOROS・Garminどちらにも用意されています。
一方、コース図(GPXデータ)から設定する場合は、この3パターンから選ぶのではなく、目標タイムに対する「強度」を表すスライダーで調整する形になります。

区間ごとの実際のペースは、この強度設定をもとに、ツールが起伏に応じて自動的に微調整してくれます。
今回のMINATOシティハーフマラソンのシミュレーションは、自作したGPXデータ(コース図)を読み込ませて行ったので、この後者の設定方法にあたります。
理由は単純で、ゴール直前に上り坂が待っているこのコースで、強度を欲張った設定にしても、上げたいタイミングで坂に当たれば計画通りに走れないと判断したからです。
だったら強度を欲張らず、坂の手前まで無駄な貯金も消耗もしない設定にしておく方が、崩れ幅を小さくできると考えました。
実際に出力されたペース戦略のグラフを見ても、控えめな強度で設定したはずのペース線は、7km手前・10〜12km付近・19km手前あたりで明確に上振れしていました。
ツールが自動的に、起伏に応じてペースを調整してくれている証拠です。
「強度を欲張らなくても、コースが平坦じゃない限り、実際のペースは一定にはならない」ということが、数字とグラフで裏付けられた形です。
【徹底比較】Garmin PacePro vs COROSペース戦略
目標タイム(1:35:00)・平均ペース(4’29″/km)自体は、どちらも手動で同じ数字を入力しているので一致します。
ただ、実際に使ってみると、ツールごとの個性がはっきり出ました。
| 比較項目 | Garmin(PacePro) | COROS(ペース戦略) |
|---|---|---|
| スプリット粒度 | 1km固定 | 1km/5km/10kmで切替 |
| 坂の反映方法 | 主観スライダー(イージー〜ハード) | 区間ごとの詳細数値(標高・ペース) |
| 天候考慮 | 非対応 | 直前3日間の天気予報を自動反映 |
| 向いている人 | 感覚的に微調整したい人 | 数値データで厳密に把握したい人 |
1. スプリットの粒度:切り替え自在のCOROS、1km固定のGarmin
COROSは1km/5km/10kmと表示単位を切り替えられるので、1kmごとの細かい上げ下げも、レース全体の大まかな流れも、どちらも確認できます。

一方Garminは1kmごとの表示で固定されているため、粒度を変えて見ることはできません。
2. 坂道の扱い:感覚的調整のGarmin、数値重視のCOROS
Garminは「上り坂の運動量」をイージー〜ハードのスライダーで設定する仕組みです。
上り坂でエネルギーを消費しにくいタイプならイージー、消費しやすいタイプならハード寄りに設定します。

一方COROSは、セグメントごとに「区間ペース」「区間タイム」「累積タイム」「上昇/下降m」を数値でそのまま提示してきます。
Garminは自分の坂への強さを主観的に反映させるタイプ、COROSは坂の情報を数値でそのまま見せてくるタイプ、という違いです。
3. 天候考慮:3日前の条件で再計算できるCOROSの強み
COROSは大会3日以内であれば、スタート時刻を入力すると当日の天気を考慮したペース戦略を組み直せます。

この機能はGarmin側では確認できませんでした。
どちらが優れているというより、「感覚的に調整したい人はGarmin」「数値で細かく確認したい人はCOROS」という印象です。
私自身は今回、両方のツールで同じコースを検証し、結果に大きな矛盾がないことを確認した上で、最終的な目標タイムに落とし込みました。
自分の目標タイムでも、同じ手順で試せる
今回はMINATOシティハーフマラソンと自分の目標タイムを例にしましたが、手順自体はどのコース・どの目標タイムでも同じです。
- コースのGPXデータを用意する(大会公式のものがあればそれを使う。なければ自作も可能)
- Garmin PacePro、またはCOROSのペース戦略機能にインポートする
- 目標タイムを何パターンか入力し、標高プロフィールを踏まえたペース配分をシミュレーションする
- 明らかに無理のある設定になっていないか、区間ごとの上振れ・下振れを確認する
過去の実績や感覚だけで目標タイムを決めるのではなく、コースの特性をデータで確認してから走り出す。これが、レース当日に「こんなはずじゃなかった」を減らす一番の準備になると感じています。
設定方法とGPXデータはこちら
今回、実際にGarmin PacePro・COROSのペース戦略機能をどう設定したかは、画面操作の手順込みでnoteにまとめました。
GPXファイルの取り込み方から、Garminのスライダーでの坂道戦略調整、COROSのセグメント表示切り替えまで、そのまま真似できる形にしています。
MINATOシティハーフマラソン2026のコースGPXデータは無料で配布しています。




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