森に抱かれるような時間を求めて:北杜市・白州の水の恵みと静寂

10月上旬、秋晴れに恵まれた週末。
今回森の静けさと上質なキャンプ体験を求めて訪れたのは、山梨県・北杜市にある「白州・星かげの森 CampTown」です。
名水百選の地として名高い白州エリア。
その豊かな自然に溶け込むようにたたずむこのキャンプ場は、まさに都会の喧騒から離れるための隠れ家と呼ぶにふさわしい場所でした。
山梨の中でも、豊かな自然とこだわりの名店が両立する北杜市で、静寂を求めてここにたどり着きました。
2泊3日の滞在は、初日から2日目の日中まで、カラリとした秋晴れに恵まれました。
夜は焚き火を囲みながら、森の音に優しく包まれる静かな時間を堪能。
時間が経つのを忘れるほど、心穏やかなひとときです。
ただし、自然には逆らえません。
2日目の深夜から3日目の午前にかけては小雨となり、結果的に雨撤収となりました。
今回の滞在の気候は、最低気温15℃、最高25℃ほど。
日中は半そででも快適でしたが、夜は長そでに加え、薄手のフリースが必須でした。
それでも、空気の澄み方、白州の豊かな木々の香り、そして朝霧が立ち込める幻想的な美しさ——この季節だからこそ肌で感じられる、特別なキャンプになりました。
“森の息づかい”を感じる場所:白州の森が持つ特別なプライベート感

「星かげの森 CampTown」という名前の通り、星空が名物のキャンプ場です。
今回は残念ながら天候が安定せず、星のきらめきは控えめでした。
もし満天の星を狙うなら、湿度が下がり空気が澄む晩秋から冬にかけてがベストシーズンでしょう。
しかし、その代わりに私たちの五感を支配したのは、“森の息づかい”です。
鳥のさえずり、木々を揺らす風の音、そして微かに漂うフィトンチッドの香り。
人工的な生活音はほとんどなく、まるで森そのものが生きているかのような、静けさの中に生命の躍動を感じる時間が流れています。
印象的だったのが、木々を通して差し込む光の美しさです。
朝、森の中に細く差し込む木漏れ日は、時間と共にその角度を変え、タープやテントの内部に柔らかな光の帯を作り出します。
この自然な音、香り、光のすべてが、心がゆるむ感覚を与えてくれるのです。
忙しい日常で張り詰めた五感が、ゆっくりと解き放たれていくのを感じました。
山梨の喧騒から離れた北杜市の奥深い森だからこそ得られる、特別な空間でした。
陽だまりLサイト3番:広さと落ち着きのバランスが絶妙な「特等席」

今回私たちが利用したのは、全25区画の中でも特に広めに設計された「陽だまりLサイト3番」です。
区画サイトながら、窮屈さは一切なく、しっかりと確保されたプライベート感が魅力。
木々に囲まれながらも、上空が開けているため、適度な「抜け感」があり、解放感と落ち着きを両立させています。
サイトの広さと地面の状態

陽だまりLサイト 3番は、ogawaロッジシェルターIIとタープ、クルマを駐車しても余裕をもって設営できる広さ。
体感として、テントとタープを張っても、リビングスペースと焚き火スペースをしっかり分けられるほどのスペースがあります。
これは、隣のサイトとの距離を保てるだけでなく、生活動線にゆとりを生み、滞在中の快適さを格段に高めてくれました。
地面はほぼフラットで細かい砂利が敷き詰められており、歩きやすく、水はけも抜群。
最終日の朝に雨が降っても、水たまりやぬかるみに困惑することはありませんでした。
この行き届いた管理体制は、悪天候時のストレスを大きく軽減してくれます。
山梨の高規格キャンプ場を探している方にとって、この地面の質は大きな判断基準になるはずです。
光の変化を楽しむレイアウト術

サイトレイアウトの際は、太陽の軌道を意識するのがおすすめです。
このサイトは太陽の軌道が山側にあるため、直射日光を強く受けることは少なめ。
特に朝は、木漏れ日が優しく差し込む景色を正面に楽しむことができます。
光の変化と景観のバランスを最大限に活かす、「特等席」のようなサイトでした。
設備・管理体制:これほど行き届いた山梨のキャンプ場は稀な「心地よさ」

「自然の景観を損なわずに、利用者がストレスなく過ごせる整備」——この相反する要素を高いレベルで両立させているキャンプ場です。
ここ「星かげの森 CampTown」は、まさにその理想型と言える場所でした。
管理者の方も気さくで丁寧、そして何より“この場を大切にしている”という気持ちが、細やかな会話や設備の維持管理から強く伝わってきます。
それは「心地よさの哲学」が根底にあるからだと感じました。
トイレ:細部に宿る心づかい


外観は周囲の景観になじむシンプルなデザインですが、中はまるで一般家庭のように快適。
もちろん、温水ウォシュレット付き。
男女それぞれ2基ずつ用意されており、朝の混雑時にもあまり待たずに利用できました。
明るく、清潔感のある空間は、アウトドアでの不安要素を一切感じさせません。
炊事場:使い勝手を追求した設計


木の温もりを残したデザインで、手作り感と清潔さが高いレベルで共存しています。
最大のポイントは、温水対応であること。
特に肌寒くなる季節の洗い物は、温水があるだけで格段に楽になり、油汚れの落ちも違います。
さらに、スポンジ・たわし・洗剤・ハンドソープまで常備。そして、大型の鍋やBBQコンロも余裕を持って洗える広めのシンクが隣接しており、キャンパーのニーズを理解した設計だと感心しました。
シャワー・ドライヤールーム:家族連れにも安心の配慮
無料で利用可能なシャワーは、男女それぞれ1室ずつ。
シャワールームの横には、なんと独立したドライヤールームがあり、コンセントも完備されています。
これは女性や子連れキャンパーにとっても、非常にうれしい心づかいです。
ゴミ捨て:意識を高める独自のシステム
ゴミの分別は比較的シンプルですが、燃えるゴミは専用の集積箱がなく、管理人さんに直接手渡しするという独自のシステムを採用しています。
この「手渡し」というプロセスが、利用者側に“自然を借りている”という意識を自然と高め、よりていねいにゴミを扱うきっかけを与えてくれます。
キャンプ場が場を大切にする姿勢が、利用者の行動にも良い影響を与えていると感じました。
天候と服装:昼夜の寒暖差と標高を考慮した備え

今回の滞在時は、日中25℃、夜間は15℃ほどと、寒暖差の大きい時期でした。
昼はTシャツや薄手のシャツで快適に過ごせましたが、太陽が沈むと急速に冷え込みます。
朝晩の対策
薄手のダウンやフリース、そして首元を守るネックウォーマーがあると体感温度がぐっと上がります。
これからの季節(10月中旬〜11月)
標高が高い分、平地より冷え込むため、防寒ジャケットや、テント内での暖房対策も検討が必要です。
天候の変化: 標高がある場所は、天気の変化も早いため、日帰りでも使えるコンパクトな雨具の準備もおすすめです。
夜の過ごし方:焚き火と静寂に浸る贅沢な時間


日が暮れた後、私たちは特別なことをせず、ただ焚き火と静けさを楽しみました。
夜の静寂の中、熱いコーヒーを淹れるでもなく、ただ薪のはぜる音、木々を抜ける風の音を聞きながら過ごす。
そんな「何もしない贅沢」が、このキャンプ場には最も似合います。
揺らめく炎は心を落ち着かせ、周囲から聞こえるのは森の音だけ。
時折、遠くから聞こえるフクロウの短い鳴き声が、その静寂を際立たせます。
デジタルデトックスという言葉が陳腐に聞こえるほど、私たちは自然の中に自分を預け、五感が研ぎ澄まされるような夜を過ごせます。
雨撤収でもストレス最小限だった理由:整備と自然の絶妙なバランス


最終日の朝は、パラパラと小雨が降るコンディションとなりました。
キャンプ経験者にとって、雨撤収は最もストレスを感じるイベントの一つです。
しかし、今回はそのストレスが最小限で済みました。
理由は、やはり「地面」にあります。
細かい砂利のサイトは水はけが良く、ぬかるみもゼロ。
撤収作業をタープ下で落ち着いて行えただけでなく、地面が汚れないため、車周りや靴底に付着する泥汚れも最小限で済みました。
最後の瞬間まで、「整備」と「自然」のバランスの良さを肌で感じさせてくれました。
この地面の管理ひとつとっても、運営側の「利用者に快適に過ごしてほしい」という想いが伝わってきます。
周辺情報|北杜市・白州エリアのおすすめ立ち寄りスポット
北杜市・白州エリアには、キャンプの準備や滞在を豊かにしてくれる魅力的なスポットが多数あります。
買い出しで立ち寄りたい場所
ひまわり市場:上質で独自の品揃えが魅力


地元野菜や精肉が豊富に揃う、キャンパー御用達の市場です。単なるスーパーではなく、「成城石井」のような上質な品揃えが特徴。価格は少々高めですが、キャンプで贅沢な夜を過ごすための食材が全て揃います。
特に、スタッフがおすすめする地元の特選精肉や、ここでしか扱っていない独自の商品を求めて、県外からリピートするキャンパーも多いそうです。滞在中のキャンプ飯を格上げしたいなら、立ち寄りは必須です。
併設のパン工房「&ひまわり」がおすすめ 市場内には歴史的な製法を受け継ぐパン工房「&ひまわり」が併設されています。翌日の朝食にもおすすめ。シンプルながら小麦の風味豊かなパンが並び、個人的には「チャバタ」が特にお気に入りでした。
道の駅はくしゅう:湧水やお土産が充実

名水百選に選ばれた白州の湧水が無料で汲めるスポット。地酒やお土産も充実しており、チェックアウト後の立ち寄りにも最適です。
●湧水利用のヒント: 湧水の汲み場は人気が高く、常に2~3人待ち程度の利用者がいます。ペットボトルやポリタンクを数本以上持参している方が多いため、汲むための容器は必ず持参を。
●地元野菜コーナー: 午後でも比較的商品は残っていますが、鮮度の高い野菜を確実に手に入れたいなら、開店直後に出向くのがおすすめ。
お土産におすすめの老舗
金精軒:「生信玄餅」を狙うならこちらへ

信玄餅といえば「桔梗信玄餅」を見かける機会がとても多いですが、こちらは「信玄餅」発祥の老舗和菓子店。ここでしか味わえない「生信玄餅」が特に有名。生信玄餅の賞味期限は製造日の翌日と短く、鮮度が命です。道の駅はくしゅうでも扱いはありますが、確実に翌日賞味期限のものをお土産にするなら、金精軒本店での購入がおすすめです。
立ち寄りメリット: 道の駅はくしゅうから車で数分と近く、次にご紹介する「七賢」とは斜向かいにあるため、帰路にまとめて立ち寄るのに非常に便利です。
七賢:蔵元限定酒と試飲が魅力

創業300年を超える名酒の酒蔵。白州の水の美味しさが凝縮された日本酒をお土産にできます。
蔵元見学・試飲: 施設の中には有料の見学施設もありますが、予約なしで参加可能です。特に直営の酒処「大中屋」では、カウンターでの試飲が可能。私たちが訪れた平日は待ち時間なしで試飲を楽しまれている姿が見受けられました。
一般的な銘柄のお酒であれば、ひまわり市場や山梨県下のスーパーオギノでも購入できます。七賢を訪れる唯一の目的は、ここでしか購入できない蔵元限定「七賢人シリーズ」を狙うこと。非常に人気が高く完売していることが多いですが、日本酒好きならチェックは必須です。
ぜひ訪れたい山梨の個性派食堂
実体験に基づくランチタイムの攻略法
キャンプの設営前や撤収後のランチタイムは混雑しがちですが、経験上、12時ちょっと過ぎ(開店直後の客が退店し始める頃)をあえて狙うとスムーズに入店できる印象です。今回土曜日に「アルプス食堂」を訪れた際も12時5分過ぎでしたが、外での待ち時間なしで入れました。
アルプス食堂:シンプルな山梨グルメを堪能
メニューは麺類、チャーハン、もつ煮丼、もつ焼き丼と非常にシンプルな構成。奇をてらわず、お目当てのものを普通に美味しく食べたい時に最適です。山梨グルメの代表格である「もつ煮丼」は一度試してみる価値はあります。他のお客さんのオーダーをうかがうと、「麺類のみ」「チャーハンのみ」「麺類とチャーハン」のパターンが大半でした。私は「ラーメン」と「ミニもつ煮丼」をいただき、期待どおりの味に大満足でした!
まとめ:整いすぎていない“ちょうどよさ”が心地いい山梨の上質キャンプ

「白州・星かげの森 CampTown」は、一言で表すなら「高規格でありながら自然に溶け込んでいる、上質なキャンプ場」です。
高規格キャンプ場のような設備がすべて清潔かつ快適に保たれているにも関わらず、決して人工的な雰囲気に傾きません。
「手作り感覚」をしっかりと残している、整いすぎていない“ちょうどよさ”が心地いいのです。
派手なアトラクションやアクティビティはありませんが、心が静かに満たされていく場所。
星空、木々の香り、焚き火の静寂、そして穏やかな時間。
このキャンプ場は、また季節を変えて訪れたいと思わせる、心に深い一幕を残してくれる特別な場所でした。
自然の中でゆったりと自分だけの時間を楽しみたい方、設備の快適さも譲れない大人のキャンパー、そして山梨で高規格な森のキャンプ場を探している方に、自信をもっておすすめします。








コメント